消化器科

便潜血陽性を放置するとどうなる?精密検査を受けるべき理由 〜便潜血検査で陽性になったら」シリーズ2

yoshiki

こんにちは。鹿岳胃腸科・内科です。

前回の記事では、 「便潜血陽性=すぐにがんという意味ではないが、油断は禁物」 という大切なポイントをお伝えしました。

今回は、 「忙しい」「怖い」などの理由で精密検査を先延ばしにしている方へ、 放置すると何が起こるのかを、データを交えながら分かりやすく解説します。

この記事は、あなたを怖がらせるためではありません。 “知らなかったことで後悔する人を減らすため” に書いています。

どうか3分だけお読みください。


便潜血陽性でも「約3割の方が精密検査を受けていない」という現実

健康診断で便潜血陽性となった方のうち、 約30%は精密検査(大腸カメラ)を受けずに放置してしまう という報告があります。

その理由はさまざまです。

  • 忙しい
  • 恥ずかしい
  • 痛そうで怖い
  • また陽性になるかもしれないから様子を見たい
  • “便潜血陽性=よくあること”だと思っている

しかし、こうした”先延ばし”が、 治療が簡単に済む時期を逃す最大の要因 になってしまうのです。


放置した場合に起こること → 早期発見のチャンスが静かに失われます

大腸がんは 「早期ならほぼ治るがん」 です。 その最大の理由は、

  • ポリープ(前がん病変)の段階で切除できる
  • 早期がんなら内視鏡治療で治療完了

という、非常に有利ながんだからです。

しかし、放置すると…

  • 小さなポリープ → 大きくなる
  • 良性ポリープ → がん化する
  • 早期がん → 進行がんへと静かに進む

という変化が確実に進んでいきます。

つまり便潜血陽性は 「大腸のどこかで出血が起きている」というサイン。 それを放置することは、 自ら早期発見のチャンスを手放す行為に等しいのです。


「1年後にもう一度便潜血検査」は絶対にNG

患者さんからよく聞く言葉があります。

「忙しいから、今年は様子を見て、来年もう一度便潜血検査を受けます」

実はこれが最も危険な判断です。

なぜか?

便潜血検査は “その日、便に血がついていたかどうか” を調べる検査です。

大腸がんやポリープがあっても、

  • いつも出血するわけではない
  • 進行がんでも便潜血陰性となることがある
  • 早期がんでは半分以上が陰性になることもある

つまり…

便潜血陰性 = がんがない、ではありません。

「陽性 → 来年は陰性 → 安心」 という誤解は非常に危険で、 実際に「数年後に進行がんで見つかる」という例もあります。

便潜血陽性と出たら、 次にすべきことは”再検査”ではなく”精密検査(大腸カメラ)”です。


早期大腸がんなら「99%治る」

大腸がんの治療成績は、発見のタイミングで劇的に変わります。

早期がん(ステージ0〜Ⅰ)

  • 内視鏡で切除
  • 入院なし〜数日
  • 抗がん剤不要
  • 治癒率:約95〜99%

進行がん(ステージⅢ〜Ⅳ)

  • 手術+抗がん剤
  • 入院・治療期間が長い
  • 再発リスク
  • 治癒率:大きく低下

同じ「大腸がん」という病名でも、 見つかった時期だけで人生がまったく違うものになります。


ポリープの段階で見つければ「がんを予防できる」

大腸がんの多くは、 “腺腫性ポリープ”という良性の段階からゆっくり育ってがんになる ことが分かっています。

つまり…

ポリープを切除する = 未来の大腸がんをひとつ減らすこと

これは大腸カメラでしかできません。

突然がんが発生するのではなく、 長い時間をかけて少しずつ悪性化していく病気だからこそ、予防が可能なのです。


日本と米国の大腸がん死亡率の差から見えること

大腸がんによる死亡率は、国によって大きく異なります。

米国では、かつて大腸がんが非常に多かったものの、 検診の普及と精密検査の徹底により、死亡率が着実に低下しています。

一方、日本は先進国の中でも 大腸がん死亡率が高い水準にとどまっています。

その背景として、専門家からは次の点が指摘されています。

  • 日本は便潜血検査の受診率が十分に高いとはいえない
  • 陽性後に大腸カメラへ進まないケースが多い
  • 結果として、早期の段階で見つかりにくい

つまり…

「検査を受けない人が一定数いること」が、日本の大腸がん死亡率を押し上げる要因になっているのです。

これは統計の話であると同時に、 ひとりひとりの行動が未来を変えるという意味でもあります。


「忙しい」「怖い」と感じているあなたへ

不安に思うのは自然なことです。

しかし、大腸カメラは

  • 検査自体は10〜15分程度
  • その日のうちに結果が分かる
  • ポリープがあればその場で切除
  • 異常がなければ「数年は安心」
  • 何より、命を守る最も確実な方法

という検査です。

当院では、1万件以上の大腸カメラ検査の経験を持つ医師が、 丁寧に検査を行います。

いま半日だけ時間をつくることで、 未来の大きな後悔を確実に防ぐことができます。


まとめ:放置で失うもの、検査で得られるもの

放置した場合

  • 進行がんのリスク上昇
  • 早期発見の機会を逃す
  • 精密検査をしない限り安心できない
  • 数年後に後悔する可能性

検査を受けた場合

  • 早期ならほぼ完治
  • ポリープの段階で切除=将来のがんを予防
  • 異常なしなら大きな安心
  • 健康寿命を守る第一歩になる

「陽性」と出た今が、未来を守るチャンスです

便潜血陽性は偶然ではありません。 “いま調べるべき”という身体からのサインです。

どうか、このチャンスを逃さずにご相談ください。

「当院の胃腸科診療について」

「大腸カメラ検査の詳細はこちら」

「前回の記事:便潜血検査で陽性に!まず知っておきたい5つのこと」

ABOUT ME
鹿嶽 佳紀
鹿嶽 佳紀
医療法人社団 鹿岳胃腸科・内科 理事長
内科医として30年、たくさんの経験を積ませていただいています。これからも皆様に最新・最良の治療を提供していきます。また、地域の医療水準の向上に貢献できるよう、日々進歩する医療を常に学んでいます。野鳥とDIYが大好きで、最近の休日は、専ら庭の手入れです。
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