消化器科

便潜血検査で陽性に!まず知っておきたい5つのこと 「便潜血検査で陽性になったら」シリーズ1

yoshiki

こんにちは。鹿岳胃腸科・内科です。

健康診断や人間ドックで「便潜血検査 陽性」という結果を受け取り、不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

「大腸がんかもしれない…」と心配になる気持ちはよく分かります。

でも、まずは落ち着いてください。陽性=大腸がん、ではありません。

今回は、便潜血検査で陽性と言われた方に、まず知っておいていただきたい5つのことをお伝えします。


1. 便潜血検査とは「便に血が混じっているかを調べる検査」

便潜血検査は、便の中に目に見えない微量の血液(潜血)が混じっていないかを調べる検査です。

大腸にがんやポリープがあると、便が通過するときに表面がこすれて出血することがあります。この肉眼では見えないごく少量の出血を検出するのが、便潜血検査の役割です。

検査方法はとてもシンプルで、専用のスティックで便の表面をこすって採取するだけ。痛みもなく、自宅で簡単にできる検査です。

現在、日本では2日法(2日間にわたって便を採取する方法)が一般的です。これは、大腸がんがあっても毎回出血するわけではないため、2回採取することで見逃しを減らす工夫です。


2. 陽性でも「大腸がん」とは限らない

ここが最も大切なポイントです。

便潜血検査で陽性になった方のうち、実際に大腸がんが見つかるのは約2〜3% です。

つまり、陽性と言われた100人のうち、大腸がんがあるのは2〜3人程度ということになります。

陽性になる主な原因

原因割合の目安痔(いぼ痔・切れ痔など)約50〜60%大腸ポリープ約30〜40%大腸がん約2〜3%大腸炎・その他数%

ご覧のとおり、陽性の原因で最も多いのは「痔」 です。

また、大腸ポリープが見つかることも多くあります。ポリープの多くは良性ですが、将来がん化する可能性があるものもあるため、早めに見つけて切除しておくことが大切です。


3. 「痔があるから大丈夫」は危険な思い込み

便潜血検査で陽性になったとき、最もやってはいけないのが**「痔があるから、きっとそのせいだ」と自己判断して放置すること**です。

確かに、痔からの出血で陽性になることは多くあります。しかし、痔があっても、同時に大腸がんやポリープがある可能性は否定できません。

実際に、「痔だと思い込んで精密検査を受けなかったら、進行した大腸がんだった」というケースは少なくありません。

痔の有無にかかわらず、便潜血検査で陽性になったら、必ず精密検査を受けてください。


4. 「もう一度便潜血検査」は意味がない

陽性の結果を受けて、「念のためもう一度便潜血検査を受けて、陰性なら大丈夫」と考える方がいらっしゃいます。

これは間違いです。

便潜血検査が2日法で行われているのは、大腸がんがあっても常に出血しているわけではないからです。たまたま出血していない日に検査すれば、陰性になることもあります。

一度でも陽性と判定されたら、便潜血検査の再検査ではなく、精密検査(大腸カメラ検査)を受ける必要があります。

日本消化器がん検診学会も、「便潜血検査陽性後に便潜血検査を再検査することは不適切」と明記しています。


5. 精密検査を受けることで「安心」が手に入る

「精密検査って、大腸カメラですよね…。ちょっと怖いな」

そう感じる方も多いと思います。

しかし、精密検査を受けることには、大きなメリットがあります。

精密検査のメリット

① 大腸がんの早期発見

大腸がんは、早期に発見すれば約99%が治るがんです。精密検査を受けて早期発見できれば、内視鏡治療だけで完治することも可能です。

② ポリープの発見・切除

大腸カメラ検査では、ポリープが見つかればその場で切除できることがほとんどです。ポリープの段階で切除しておけば、将来の大腸がんを予防できます。

③ 「異常なし」という安心

精密検査の結果、何も見つからなければ、それは「安心」という大きな収穫です。陽性の約60〜80%の方は、精密検査で重大な異常は見つかりません。

放置するとどうなる?

一方で、便潜血陽性を放置した場合のリスクは深刻です。

ある研究では、便潜血陽性を放置して症状が出てから受診した人は、すぐに精密検査を受けた人に比べて、大腸がんによる死亡リスクが約5倍高いという報告があります。


精密検査を受けていない方が約30〜40%もいる現実

残念ながら、便潜血検査で陽性と判定されても、精密検査を受けていない方が約30〜40%いるのが現状です。

その理由として多いのは:

  • 「自覚症状がないから大丈夫だと思った」
  • 「大腸カメラが怖い・恥ずかしい」
  • 「忙しくて時間がない」
  • 「痔のせいだと思った」

気持ちは分かります。しかし、大腸がんは早期の段階ではほとんど自覚症状がありません。症状が出たときには、すでに進行していることが多いのです。

だからこそ、症状がない今のうちに検査を受けることが大切なのです。


まとめ:便潜血陽性で知っておきたい5つのこと

  1. 便潜血検査は「便に血が混じっているか」を調べる検査
  2. 陽性でも大腸がんの確率は約2〜3%。多くは痔やポリープが原因
  3. 「痔があるから大丈夫」は危険な思い込み
  4. 便潜血検査の再検査は意味がない。必要なのは精密検査
  5. 精密検査を受ければ「早期発見」か「安心」が手に入る

次にやるべきこと

便潜血検査で陽性と言われたら、消化器内科を受診して、大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)の予約をしましょう。

「でも、大腸カメラって痛そう…」「下剤を飲むのが大変そう…」

そんな不安をお持ちの方も多いと思います。

次回の記事では、「便潜血陽性を放置するとどうなる?精密検査を受けるべき理由」 について詳しくお伝えします。

大腸カメラ検査について不安がある方、便潜血陽性と言われて精密検査を迷っている方は、お気軽に当院にご相談ください。


※この記事は一般的な健康情報を提供するものであり、個別の診断・治療を行うものではありません。検査結果についてのご相談は、医療機関を受診してください。

「当院の胃腸科診療について」

「大腸カメラ検査の詳細はこちら」

ABOUT ME
鹿嶽 佳紀
鹿嶽 佳紀
医療法人社団 鹿岳胃腸科・内科 理事長
内科医として30年、たくさんの経験を積ませていただいています。これからも皆様に最新・最良の治療を提供していきます。また、地域の医療水準の向上に貢献できるよう、日々進歩する医療を常に学んでいます。野鳥とDIYが大好きで、最近の休日は、専ら庭の手入れです。
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