消化器科

鶏の刺身、鶏肉のタタキにご注意!

yoshiki

 最近、カンピロバクターによる感染性胃腸炎が増えています。
このところ毎日見ます。

 カンピロバクターは、ニワトリやウシ、ブタ等の家畜・家きん類の腸管内に生息しており、加熱していなかったり、加熱が不十分な食肉(特に鶏肉)やレバー(鶏、豚)等の臓器を食べること、カンピロバクターに汚染された飲料水等を飲むことにより人に感染します。
 
 昭和の時代には、ボツリヌス、サルモネラ、ブドウ球菌、腸炎ビブリオなど、細菌性の食中毒が多くありましたが、近年食の安全性が高まり、他の食中毒は滅多に見なくなりました。生牛肉食が禁止されてからは、大腸菌性の食中毒も見ません。カンピロバクターかノロウイルスによるものがほとんどです。中でも、鶏のタタキや刺身による胃腸炎の患者様が毎日のように来られます。
 カンピロバクターは鶏の20~100%に普通にいる菌です。抗生剤を与えられケージ内で飼われている国産ブロイラーよりも、地鶏の方が危険なのです。特に鶏卵はサルモネラフリーなど、徹底的に細菌管理されていますが、それは日本だけで、外国では卵は生で食べられません。

 カンピロバクターの場合、菌がいても、食べて全員が発症するわけではありません。同じ物を食べても、免疫力の十分ある方は発症しませんが、同じように食べても疲れなどで免疫の下がっている方が発症するのです。子供やお年寄りの方は絶対食べないようにして下さい。

 朝引きの鶏を使えば安全だと勘違いされているお店が多いのですが、大きな間違いです。古くなればもちろん全員発症し集団食中毒となり問題外ですが、どんなに新鮮なものでも少量の菌はいるため、免疫の下がった人には感染してしまいます。毒素型ではないので、余程古くないとすぐには発症しません。少量の菌の感染でも、免疫の下がった人の腸内で増え、十分増えた頃に症状が出ます。そのため発症するまで潜伏期が3~7日あります。
 
 基本的に抗生剤が著効しますので、当院ではあえて便培養等は行いません。結果が出る頃には治っていますし、検出されてしまったら、保健所に食中毒として届けざるを得ませんので・・・。

 生牡蠣によるノロウイルスやA型肝炎は今でもありますし、クジラの増えすぎでアニサキス症も増えていますが、今注意すべきは流行のジビエです。家畜でないジビエは病原菌だけで無く、寄生虫の宝庫なのです。寄生虫の中には薬剤の効かない、一匹一匹取り出すしか治療不能な物もいます。しっかり焼けば全然大丈夫ですが、生焼けは非常に危険です。十分注意して下さい。

ABOUT ME
鹿嶽 佳紀
鹿嶽 佳紀
医療法人社団 鹿岳胃腸科・内科 理事長
内科医として30年、たくさんの経験を積ませていただいています。これからも皆様に最新・最良の治療を提供していきます。また、地域の医療水準の向上に貢献できるよう、日々進歩する医療を常に学んでいます。野鳥とDIYが大好きで、最近の休日は、専ら庭の手入れです。
記事URLをコピーしました