風邪って? 受診時期は? 抗生剤は必要?
狭義の風邪とは、上気道(鼻やのど)の急性炎症の総称で、のどの痛みや鼻水、咳、場合によっては発熱などを伴い、数日で治る症状をいいます。
正式名称は「風邪症候群」「感冒」「急性上気道炎」などです。
俗に風邪の9割はウイルス性で、抗生物質はいらない、と言うのは、この『狭義の風邪』に対してなのです。
逆に狭義の風邪とは、ウイルス性の、それもインフルエンザや新型コロナを除いた物ですから、そうであれば抗生物質はもちろん不要です。ただ、それは結果論でもあります。
狭義の風邪は、かかったかな?位から3日ほどの時期で、その場合は放置しても治癒しますし、軽い解熱鎮痛剤や葛根湯で対処可能でしょう。受診の必要もありません。
しかし、ウイルス性が長引けば、免疫力が低下し、細菌性へ変化、上気道炎から下気道炎へ変化するのです。『咳き込みだし』たり、『痰や鼻水に色がつく』等あれば、副鼻腔炎や急性気管支炎、『扁桃に白苔が被ってくる』と細菌性の扁桃炎です。
来院時期の問題で、狭義の風邪、かかったかな?の頃に来られても、市販薬で十分で、私達医師も「う〜ん!」となるのです。
ただ、多くの方は来院時点で数日経っており、『狭義の風邪』では無く、もう既に副鼻腔炎だったり気管支炎だったり、扁桃炎、肺炎だったりします。それでも患者さんは風邪だと言って来院されます。この時点では、やはり抗生物質も著効しますので、一般の方が風邪だと思っている広義の風邪には抗生物質が必要な場合が多いのです。
実は医師にも単純に『風邪はウイルス性』、と勘違いされている方が大変多いのが実情です。抗生物質なんていらないと豪語する方も多いのですが、その方も感染性胃腸炎だと安易に抗生物質を出されます。胃腸の専門家からすれば、胃腸炎こそ9割以上ウイルス性で、一部にキャンピロバクターがあるくらいです。ウイルス性胃腸炎に抗生物質は腸内細菌に影響を与えてむしろ悪化させます。
風邪と言って来院されても、個別に診断して、風邪とひとくくりにしないことが大切です。
さて、今一番の問題は新型コロナ感染症でしょう。以前ならば高熱や全身倦怠感と言ったインフルエンザ様症状があったのですが、ワクチン接種が進んだ今、軽い喉痛だけだったりします。
検査法には大きく分けて2種類、感度の高いPCR法と、感度は低いが簡易・安価な抗原法です。
PCRは感度が高いため、早期に検出されます。遺伝子増幅に専用の装置が必要で、結果まで6時間程度要します。発熱して半日以上すれば検出されやすいです。1日以上経ってPCR陰性ならほぼ陰性でしょう。
PCRには遺伝子増幅のためにサーマルサイクラー装置が必要で、手間も時間もかかり、多くは検査技師のいる大きな病院でしか行われていません。抗原法をPCR法と偽っているキットもあります。
市販品や、普通のクリニックでできる抗原法では、発熱して24時間以上は必要、48時間以上して陰性なら、やはり陰性の可能性が高いですが、それ以前では陽性は言えても陰性は言えません。発熱無ければ3日以上経たないと陽性化しないこともあります。
インフルエンザ同時測定も併せて考えれば、抗原法では、やはり発熱から24時間~48時間の間がベストな受診タイミングでしょう。