内科

「熱中症対策に水分を摂りましょう。」は大間違いです。

yoshiki

【人間に必要な塩分】

生物にとって大切なのは「塩」です。

 戦国時代から戦前までは、「人間にとって、塩が大事だ。」と言い伝えられてきたので、クーラーのない世でも熱中症は起きにくかったのです。
「敵に塩を送る。」の逸話などは、まさに塩の大切さを表しています。
海にほど近い姫路城でさえ、お城には必ず塩の貯蔵庫がありました。
戦後、塩を重視した上での専売公社制もなくなり、いつの間にか塩の大切さが忘れられました

 昔、米国でフーバーダム建設時に熱中症による死亡が頻発しました。塩を摂ることで死者が無くなった話しは有名です。

 鉄工所など夏場でも高温での作業をするところでは、熱中症対策として、お皿に塩を盛って置いてあります。
塩をなめながら水分を摂るだけで、かなりの予防効果があるのです。


 多量の発汗により生命に大切な塩分等の電解質を失うのが、熱中症の一番の原因です。(寝たきりの方に関しては、暑くても自分で布団をはだけられず、クーラーもつけられないために、熱がこもって熱中症になり、少し原因が違います。)

水やお茶だけを摂ると、熱中症はむしろ悪化します!

 人は体温が上がると、蒸散熱で冷やそうと発汗しますが、汗を出すためには水と共にナトリウムを出すことが必要なのです。
 暑いのにしばらくすると汗が出なくなってしまうのは、水分が無くなったのでは無く、余分なナトリウムが無くなったからで、生命を維持するのに必要な最低限の塩しか残っていない状態で、暑さに慣れたわけではありません。汗が出なければ、体内に一気に熱がこもってしまいます。

 暑さで汗をかいた後に水をがぶ飲みすると、ただでさえ塩分濃度の低い血液が、吸収した水で薄められてしまいます。
 すると、血液中の塩分濃度がさらに下がり、低ナトリウム血症という生命の危機的状況に陥ります。
 全身の「こむらがえり」は、熱中症による低ナトリウム血症の一つの危険なサインです。
 熱中症で倒れた人に水を飲ませると、更にナトリウム濃度が下がり、全身けいれんを起こし死亡する事すらあります。

 緊急時は塩分の多い、経口補水液がベストですが、入手しやすいポカリスエットやアクエリアスでも良いでしょう。冷やすのも大切なのですが、早期にナトリウムを補給しなければ死に至る病ですから、迷わず救急車を呼んで下さい。冷たい風を当てたり冷やすと、こむら返りがさらに強くなり、全身けいれんを起こします。

【夏バテの正体】

「下痢をする」「お腹が張る」「食欲が無い」「怠い」「めまいがする」といった症状の「夏バテ」の正体も、実は水の摂りすぎなのです。
 塩分の入っていない水やお茶をがぶ飲みするのは、夏バテの一番の原因となります。
 人体では、飲食した水分は、一旦全部腸で吸収し、余分な水分を腎臓から排出して体内水分量を調整しています。どうしても吸収しきれなかった水分が下痢となるのです。

 塩分のない水分をたくさん飲むと、腸は水を一旦全部吸収しなければなりませんが、そうなると、血液中の塩分が一気に薄まってしまい、生命の危機となります。それを回避するための生体防御として、塩分の少ない水が入ってくると、胃を動かなくして、水が腸へ一気に流入するのを防いでいるのです。
 たくさん汗をかいた後は必ず塩分補給してください。

 水を摂りすぎると血中の塩分及び他の電解質濃度が下がってしまう事で、胃もたれが起こり、食欲が無くなります。さらに体が怠くなります。それが夏バテの正体なのです。


 漢方ではこれを水の滞り、「水毒」と古来より理解しており、夏バテには「清暑益気湯」という、薬を使います。

 「熱中症と夏バテの予防には塩分を摂りましょう。」が正解です。

 高血圧の方は塩分を摂りすぎてはいけませんが、夏は運動で大量発汗すれば血圧は下がり過ぎる事があるので、少し塩分を摂っても良いのです。
 逆に、下の血圧が/90mHgを超えていれば、運動・発汗して塩分制限をしてください。
 ポカリスエット等はカロリーが多いため、糖尿病のある方は、ご注意を。

ABOUT ME
鹿嶽 佳紀
鹿嶽 佳紀
医療法人社団 鹿岳胃腸科・内科 理事長
内科医として30年、たくさんの経験を積ませていただいています。これからも皆様に最新・最良の治療を提供していきます。また、地域の医療水準の向上に貢献できるよう、日々進歩する医療を常に学んでいます。野鳥とDIYが大好きで、最近の休日は、専ら庭の手入れです。
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